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著書紹介

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浄土真宗とは何か ―親鸞の教えとその系譜―

  • 著者:小山聡子(二松学舎大学文学部)
  • 出版社:株式会社中央公論新社
  • 新書版 288頁 860円+税
  • ISBN:978-4-12-102416-9
  • 発売日:2017年1月25日

著書の内容

  本書は、2013年に上梓した研究書『親鸞の信仰と呪術―病気治療と臨終行儀―』(吉川弘文館)をもとに、歴史学の視点から著した一般読者向けの新書です。のちに浄土真宗の開祖とされた親鸞やその家族、子孫は、とかく理想化されて研究されがちでした。しかし、そもそも親鸞は、自ら「愚禿」と名乗り、愚の自覚をする必要があると説いていました。親鸞によると、自力によって極楽往生はできず、愚を自覚して、すべてを阿弥陀仏に任せる他力でなくては往生できません。「そんな親鸞には、輝かしく理想化された姿は似合わないのではないだろうか」。そのような思いが、そもそもの私の研究の出発点です。様々に調べていくと、親鸞自身、やはり完全無欠ではなく、つい自力の行ないに執着してしまう経験もあり、他力に徹することの難しさに苦悩していたことが分かってきました。親鸞といえども、私たちと同じ人間なのです。
本書では、親鸞以前の平安仏教について概観した上で、親鸞の師法然、その弟子たち、親鸞、親鸞の妻恵信尼、長男善鸞、末娘覚信尼、孫如信、曽孫覚如、玄孫存覚、浄土真宗教団確立者の蓮如の信仰を概観し、他力と自力の狭間で揺れ動きながら親鸞の教えを伝えていった様を描きました。終章では、近現代的な価値観から、中世人親鸞が「合理的」に解釈されてきたことを述べ、親鸞やその家族、子孫を、歴史の中に位置づけて捉えていく必要があることを指摘しました。

学生の皆さんへ

  本書は、一般読者向けの新書ですので、高校生でも読めるように書かれています。まずは、かまえず手にとってみてください。大学では、既存の研究成果をそのまま鵜呑みにせず、疑う視点をもちながら勉強していくことが大事です。本書に書かれている内容についても、大いに疑う心を抱きながら、自分で歴史史料をめくり調べてみてください。
なお、本書の内容は、2014~2016年度の本学の講義科目「仏教文化B」の内容とほぼ重なっています。「仏教文化B」を受講した方にとっては、聞いたことがある事柄ばかりだと思います。大学を卒業して十年後ぐらいに本書をめくってもらい、懐かしく思い出してもらえたら嬉しいな、と思いながら執筆しました。ぜひ、その頃にめくってみてください。なお、本書については、web中公新書に、インタビューが載っています。あわせて御覧ください。

web中公新書 : 2017.02.09 著者に聞く http://www.chuko.co.jp/shinsho/portal/101827.html

(文学部国文学科 小山聡子)
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