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著書紹介

著書紹介

日本人の一生――通過儀礼の民俗学

  • 編集者:谷口 貢(二松学舎大学文学部)・板橋春夫(國學院大學非常勤講師)
  • 出版社:八千代出版
  • B6版 228頁 2,300円+税
  • ISBN 978-4-8429-1617-0
  • 発売日:2014年1月17日発行

著書の内容

 人の一生にはその誕生から死に至るまで、さまざまな儀礼が行われてきた。日本社会においては、出産祝い、お七夜、名付け祝い、七五三、成人式、結婚式、厄年、長寿祝い、葬送、死者供養、先祖祭祀などである。一人ひとりが歩む人生は多様であるが、この世に生を受けて成長し、結婚をし、病気をし、やがて老いを迎えて死に至るという過程は、多くの人間がたどる普遍的な性格を持っている。そして、人の一生にはいくつかの節目となる段階があると考えられ、そうした節目に儀礼が行われてきたのである。民俗学では、こうした人の一生に関わる儀礼を「通過儀礼」という概念で捉えてきた。
本書は、民俗学の立場からこれまでに蓄積されてきた通過儀礼研究の全体像を提示する意図の下にまとめられたもので、日本社会における農山漁村の伝統社会と近代化・都市化した現代社会との連続面や非連続面に十分配慮し、生活の中で直面する生老病死などの現在的課題にも触れるように配慮した内容となっている。
本書は11名の分担執筆で、本論が12章、補論が3章、そしてトピックとして取り上げた4つのコラムで構成されている。全体の章題及び執筆者は以下の通りである。

  1. 1 生命観と通過儀礼 (板橋春夫)
  2. 2 通過儀礼研究の歩み (谷口 貢)
  3. 3 年齢の民俗 (板橋春夫)
  4. 4 妊娠と出産の民俗 (鈴木由利子)
  5. 5 子どもの成長 (猿渡土貴)
  6. 6 青年と成人儀礼 (宮前耕史)
  7. 7 結婚の民俗 (板橋春夫)
  8. 8 女性の民俗 (鈴木明子)
  9. 9 大人の民俗 (山崎祐子)
  10. 10 老いの民俗 (大里正樹)
  11. 11 葬送儀礼の民俗 (板橋春夫)
  12. 12 墓と先祖祭祀 (谷口 貢)
  13. 補論1 食文化と通過儀礼 (板橋春夫)
  14. 補論2 病と通過儀礼 (越川次郎)
  15. 補論3 老いといきがい (佐野〈藤田〉眞理子)
  16. コラム①エコー診断と胎児観(宮内貴久)/コラム②名付けの民俗(板橋春夫)/コラム③水子供養(鈴木由利子)/コラム④位牌と戒名(谷口 貢)

学生の皆さんへ

 本書は、民俗学の通過儀礼研究を分かりやすく解説し、大学の授業などで実際に使える概論書として企画したものであるが、民俗学を初めて学ぶ方々への道案内ともなっている。人のー生に行われる通過儀礼を窓口にして、民俗学への関心を深めていただければ幸いである。また、編者自身も通過儀礼の民俗学をコンパクトにまとめた1冊が手元にあれば便利でいいなと思ってきたので、民俗学における類書はほとんどみられないといってよい。
 地域社会の特色や個性がだんだんと希薄になりつつある現在、日本人がこれまでどのような生活文化を築き上げ、どのような生活を営んできたのかを多面的に理解することは、われわれの生活のありようを足下から見直す上で、ますます大切になってきているといえる。伝統文化に軸足をおいて「日本人の一生」を追究した本書が、日本文化を理解する一助になればと願っている。

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