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著書紹介

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藤原定家論

  • 著者:五月女 肇志(二松学舎大学文学部)
  • 出版社:有限会社 笠間書院
  • A5判 341頁 8,400円(税込)
  • ISBN:978-4-305-70542-6
  • 発売日: 2011年2月10日発行

著書の内容

 藤原定家と聞けば、漫画『超訳百人一首 うた恋い。』の主人公として、なじみのある人が多いのではないでしょうか。新古今時代を代表する歌人で『百人一首』を編み、『古今和歌集』『伊勢物語』『源氏物語』『更級日記』などを筆写することで、平安時代の作品を後世に伝えた古典学者としても知られています。本書はこの著名な歌人の和歌作品を中心に論じたものです。

 皆さんは古典の授業で本文を暗誦した経験をお持ちでしょう。誤って覚えて減点されたことがあるかも知れません。しかし、筆で写していた時代の古典文学は私達が教科書で知っているものと本文が異なるものも少なくありませんでした。例えば、私達が知っている『万葉集』の本文は江戸時代以降に解読されたものも多く、藤原定家が生きていた鎌倉時代と違うものがあります。それを教えてくれるのが、定家が持っていた本を基にして江戸時代に写された広瀬本万葉集です。第1章ではこの写本を中心に定家や他の歌人が私達の知らない『万葉集』の世界をどのように自分の作品に本歌取したかを論じています。

 第2章では『伊勢物語』『大和物語』等の物語文学を定家や父親の俊成がどのように自分の歌に用いたかを分析しています。

 第3章では自分の作品集や勅撰和歌集を編むときに、現在本を作るときに清書や校正をするのと同じように、もとあった歌の本文をあえて改変してより良い和歌集を作り出そうとする定家のねらいを検証しました。

 定家は有名な歌人のため、なりすまして作られた書物も多くあります。そのために現在でも真偽論争の決着がついていないものもあるのです。第4章ではその一つ『藤河百首』の作者が藤原定家であることを、和歌を分析した上で証明し、これまでの説と違う時期に百首が生み出されたことを論じました。その後反論も出され、今でも議論が続いています。

学生の皆さんへ

 あとがきにも記しましたが、この本で論じられていることの多くは大学の授業での学生達とのやりとりを通じて浮かび上がってきたものです。教えるということが自分自身のより深い学びにつながることを実感しています。少しでも多くの方に国文学科の門を叩いて頂き、共に新たな発見をして行けることを心から望んでいます。 (二松学舎大学文学部国文学科 五月女肇志)

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