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著書紹介

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日本文学の「女性性」

  • 編者:増田裕美子(二松学舎大学文学部)・佐伯順子(同志社大学社会学部)
  • 出版社:思文閣出版、2011年2月25日発行
  • A5版 219頁 2,415円(税込)
  • ISBN978-4-7842-1549-2

著書の内容

 本書は東アジア学術総合研究所の共同研究プロジェクトの成果を学術叢書として刊行した最初のものです。本書のもとになった共同研究は、私が代表研究者となって2006年度から三年間にわたって行ったものです。その間六回の公開ワークショップが開かれ、延べ十三人の研究者が発表を行いました。

 この共同研究の趣旨は、日本文学が「女性性」の強い文学であることを様々な角度から検証することにあります。平安時代という古い時代に紫式部を始めとする女性作家が輩出したことは世界文学的に見ても稀有な現象ですが、そうした「女性性」が日本文学の根底にあって近・現代の作品にまで引き継がれていることを明らかにしようとしたものです。

 共同研究のメンバーは比較文学と近代文学の研究者からなり、毎回のワークショップでは発表のあとに参加者の間で真剣かつ熱心な議論が交わされ、予定の時間を大幅に延長するほどでした。

 本書の内容は目次にあるように三つの部分に分かれています。まずは男性作家による近代の文学作品が取り上げられ、ジェンダー的観点からの読み直しが行われています。三島由紀夫、太宰治、夏目漱石といった名立たる男性作家の言説に見られる「女性性」や男性視点の女性表象のありようは、次に取り上げられる女性作家の言説のありようと対比的に眺めることができます。そこで論じられる樋口一葉、壺井栄、松浦理英子といった明治から現代までの女性作家の作品からは、女性ジェンダーの時代的変遷も感じ取れますが、つづく第三部になると、狭義の「文学」の枠をこえて漫画などビジュアル的なものも含めての女性表象の分析がなされ、メディア時代の文化現象としての女性表現の研究がなされています。そこでは「女性性」が従来の様々な価値のヒエラルキーを無効化することが指摘され、新たな文学研究の方向性が示されてもいると言えるでしょう。(文学部国文学科 増田裕美子)

目次

はじめに(増田裕美子)

第一部「男性文学」の女性性
三島由紀夫『朱雀家の滅亡』・ジェンダーの観点から―戦前日本における家庭の抑圧の光景―(市川裕見子)
少女とロココ―「女生徒」における〈少女〉表象―(平石典子)
『行人』のお直をめぐって(増田裕美子)
第二部 女性による表現世界
一葉・ウルフ・デュラス―近代日本女性文学の国際性―(佐伯順子)
〈母の涙〉の二重性―敗戦後文学としての『二十四の瞳』―(菅聡子)
松浦理英子論―魅惑する鈍感さ―(大貫徹)
第三部 新たな展開
一九八〇年代の「少女小説」と女性文化の伝統―氷室冴子を中心に―(杉山直子)
少年同士の絆―あさのあつこ「バッテリー」をめぐる欲望と暴力―(藤木直実)
ライトノベルの方へ(目野由希)

あとがき(佐伯順子)

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